「脳の栄養不足」が老化を早める!
溝口徹
フォアソクラティカー、ソクラテス以前の哲学者だったヘラクレイトスは、川を流れる水は同じ水ではなく、それが川を川たらしめているということを書いています。
生物を生物たらしめるのも、常に細胞が死に、新しい細胞が入れ替わっているという、目もくらむ死と再生の繰り返し、これだと思います。最近流行りの言葉では「動的平衡」ですね。
常々、考えてみれば凄いシステムだと思います。
最近個人的に、火傷したり日焼けしたりして同化、異化、細胞の修復力、免疫力、生命というものを実感します。
毎日の臨床で当然感じることですが。臨床でこれらを感じることがなければ、もっと腕を磨かねばないということになるでしょう(笑)
例えば、神経細胞の膜は脂肪、たんぱく質、コリン、セリンから作られ、細胞が形成されてからずっとそれらは入れ替わりを繰り返します。
細胞膜を作るこれらの成分はもちろん食べ物から摂取されるので、食べる物によって細胞膜の質は変わります。
魚の脂にふくまれるDHAを摂ると頭が良くなるといいますが、これは細胞膜を形成する成分が魚の良質な脂に変わる為ということです。
質の悪い脂ばかり摂っていたら、細胞膜を形成する脂が悪くなり、細胞機能は低下していくでしょう。
新しい細胞を作っていく材料は、食べているもので決まってきます。老化を防いで細胞の機能を上げていくには、いい栄養を充分摂っていくに限ります。
老化、最近アンチエイジングと言われて話題に上がるのが活性酸素による酸化で、酸化ストレスを減らし、抗酸化物質を摂ることが奨励されています。がんや生活習慣病、あらゆる病気に酸化が関わっていると言われています。
飲酒、タバコ、服薬は何よりも活性酸素を発生することが有害だとのことです。
脳は体全体の2パーセントの重さしかないにも関わらず、酸素量、エネルギー量の5分の1を消費します。
酸素を消費すると活性酸素が出るので、脳は大量の活性酸素発生源だと言えます。
この為、著者が言うには身体の活性酸素に対する抗酸化はよく語られるが、重要なのは脳の抗酸化だとのことです。
ここで、フリーラジカルという言葉を説明しておく必要がありますが、フリーラジカルとは原子核の周りを回る電子が不対のもので、安定しないために他から電子を奪おうとする物です。奪われた方は酸化し、形が変わったり機能を失ったりします。
この本は、ヒトの老化の原因をフリーラジカル論に求めています。
スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカルといった不対電子の活性酸素をフリーラジカルというようです。
フリーラジカルは悪い面だけではなく、白血球が細菌を倒す際に使われたり、母乳に入る細菌を殺したり、がん治療の高濃度ビタミンc点滴は過酸化水素という活性酸素を使った治療法です。
正常な細胞が持つ酵素、カタラーゼは活性酸素を消去しますが、がん細胞はカタラーゼを持たないために活性酸素にやられるのです。
正常細胞も、たんぱく質、鉄、ビタミンb群が不足するとカタラーゼが機能しなくなり活性酸素にやられてしまいます。
著者は、抗酸化を高めるキーワードを「高タンパク、低糖質、ビタミン、ミネラルをしっかり摂る」としています。
旬のもの、色の濃い緑黄色野菜、マンガン、亜鉛、ヘム鉄など。
この著者の主張は、大抵の病気は栄養をしっかり摂ることで、たんぱく質(やる気向上)をしっかり摂るのと、グルタチオン、ビタミンC、E,αリポ酸(酸化防止)、鉄(疲労回復)、DHA(脳の機能アップ)辺りは1章使って説明しています。
食い続けろ!っていうことですね。栄養のしっかりあるものを。