この本に書いてあることは一部をのぞいて実話だという。驚くべき話が次々出て来て、早く先を読みたいと同時に読んでしまうのが勿体無いと感じる本。著者の処女作とのことで、他の著作も読んでみたいが、翻訳がないようで、英語でもいいから読んでみたい。
ベロボディアとはチベットやインドでいるシャンバラ、シャングリラとほぼ同義で、チベットやインド、ペルシャ、ケルトなども元を辿るとアルタイの古層に行き着くと書かれている。日本語の起源、日本人の起源をアルタイ周辺に求める研究者もいる。
アルタイ山からは30万年前に人類が生活していた形跡が見つかっているが、ほとんど痕跡が出てこないのは、石や金属に記録を残さずに草木などに残していたためではないかとされる。
精神科医である著者はシベリアの僻地まで赴き、シャーマンとの交流により、全ての人の中にあり、「魂の双子」が待機している内なる宇宙の源泉である「精霊の泉」を訪れる体験をする。
「精霊の泉」は誰でも持っている内なる空間だが、意識が外側へ向かい物理的な欲求で限定されるに従い消滅する。「精霊の泉」はドランヴァロのハートの空間、道教の関落陰などと共通するところもありながら、どれとも違う。
一連の強烈な体験から、全ての出会い、記憶がそこに肉付けされていく。
叔父の死によりカム(シャーマンのこと)の力を継承した精神病患者、「精霊の泉」へ導いた老婆のカム、音楽で奇跡を起こす治療師(ヒーラー)、多方向から意識や時間の秘密に迫っている量子力学の権威ある研究者、アルタイ山の狩りでワンネスの体験をした同僚、、
準備された出会いにより、著者は意識、時間の核心に迫っていくと共に「魂の双子」である治療師(ヒーラー)の力を借りることで、精神科医として奇跡的な治癒を起こしていく。
シベリアのシャーマンには力の血脈があり、それぞれの血脈は一つの力を代々継承していくようで、「天のシャーマン」について触れられていたが、他にも地水火風の血脈などがあるのかもしれない。なりたてのカムが「精霊憑き」になり一晩中山の中を走らされる場面があり、これはカム見習いがみな通るイニシエーションとして説明されている。
著者は精神科医だが、こういった世界に愛を踏み入れる経験が、精神的な正常と異常を区別することの不可能性に入り込む。
モーゼなんかは何かシャーマンの血脈に属していたのか不明だが、神の声が聞こえるといって民を導くというのは今だったら精神病棟入れだろう。
例えばカスタネダを読んでいると、現生人類の思考形態とそれによってできた産物は、元々人類が持っている意識の源泉からみると一つの流れで、ほんの一部に過ぎないと感じることがあり、シャーマンの持つ思考形態は別の流れを示唆するものではないかと考えていたら、本書ではそのこと自体に触れていた。
これが原因でこれが結果として出て来るという因果で思考するほとんどの人類にとっては、シャーマンの思考形態は脈絡なく、一見何も連続性がないと感じられる。
しかし心の病の治癒場面を読むと、外部から100働きかけるより1自ら気付きを得ることの方がラディカルな変容をもたらす場合があると改めて感じる。
ボディデザインラボ takeji